少女と鬼

連載中 最終更新: 2026/09/23

生業

地鳴りが聞こえてくるかのように崩れていく
天にまで届きうるほど大きく 醜悪な姿をした人のような何かが
しかし 地が揺れることもなければ轟音が鳴り響くこともない
目の前の光景とあまりにかけ離れた静けさはその不気味さをより強調する
それもそのはず 今崩れ消え去ろうとしているのは
怪異
所謂妖怪や物の怪と呼ばれる類のもの
そのものは 実態を持たず世の物理法則に縛られない
その曲 彼らの意思でこちら側へ影響を与えられる厄介極まりない存在だ
ならばなぜ そんな身勝手極まる怪異が塵芥となろうとしているのか
その怪異に背を向けこちらに歩をすすめる彼女
鬼が白骨化したような頭蓋骨の仮面を被り
澄んだ声と重厚な男性のような声が混じった音が耳に届く
「大丈夫?」
腰が抜けて立てない私に声をかける
「だ 大丈夫だから気にしないでくれ…」
「そう じゃぁいつも通りにと伝えて」
祓い料の事だとすぐに思い当たる
わかった 声になったかもわからない声で返事する
彼女が立ち去り どれほどの時が経ったかわからないが
ようやく現実に戻されたころにはとうに日が暮れていた
「今日のは 随分と手こずったようだが」
ケタケタと鬼の骨が笑う
「そうね 何か食べたいわ 何がいいかしら」
家というにはあまりにも貧相7な
部屋というにはあまりにも無機質な空間で二人が言葉を交わす
「贅沢に肉だ お前は肉が足りない」
そう口にしより一層大きく笑う
肉が足りない
身長や胸を揶揄してではない
実際に私には肉が足りない 右の肘から先の腕
顔の大部分 足そして内臓
普通であれば死んでもいてもおかしくないほど肉が足りない
あまりにも失礼だが それでも彼なりの励ましであり冗句とわかっている
それでも軽く額を小突く
「そうね肉にしましょう それなりに振り込まれるはずだし
今日はクーポンで安くなる日だからいつもよりいっぱい食べられる」
「決まったな」
穴の空いた体を埋めるように包帯を巻いたりし
買い物に行く
ない心臓が高鳴る
買い物 それだけなのにどこか沸き立つ心が抑えられないのは
やはり女の子だからだろうか
こんな私でも そんな感情がまだあることをうれしく思いつつ
いつものお店へ赴く
今日は頑張ったから奮発しよう
いいお肉をいっぱい食べるんだ
そう心に決めて